コミュ力だけで海外移住して直面した壁。【英語力ゼロ】

海外移住

海外で会社勤めを始めて1ヶ月が過ぎた。
もうへっとへとなんだけど。自分史上最高にヘトヘト。最高なんか最低なんか。

およそ10カ月ぶりの労働。
日本での仕事はフレキシブすぎたので、ここにきて人生初の“出勤”を経験している。
「働くのしんどいー。朝起きて会社行くのしんどいー。」
と、新卒入社の5月みたいなこと毎日思ってる。

出勤するって、こんなにも翌日へのエネルギー温存を考えながら生活しなきゃいけないのか…。

まぁでも、しんどい一番の原因はこれ。
シンプルに英語がわからない。

イタリア人彼氏への愛情1本で海をこえてしまったもんだから、英語力が本当にない。

英語を話せるようになるには、
・文法を覚える!
・リスニング力をあげる!
・発音を良くする!
・単語をとにかく覚える!

などなど、いろんなアプローチがあるんだけど、私は間違いなく「コミ力」流派でやってきた。

つまりノリ。
ノリで話の流れを読んで、ノリでそれっぽく相槌を打ち、知ってる範囲の単語でノリ良く応答する。
コミ力流派が間違ってるとは思わないし、それで外国人ともある程度会話できた。
でもまぁ、当たり前だけど仕事ではノリは全く通用しないわな。

だから出勤時間は常に、言いたい事が言えないそんな世の中はポイズン状態。(ポイズンなのは世の中じゃなくて自分やで!)

覚えなきゃいけない業務が山ほどあって、それはもちろん全部英語。
わからなかったら聞きましょう、も英語。アンサーも英語。
わからない。
何がわからないかも、わからない。哲学かな?

アホだと思われたくないから黙っておこう、間違ってるくらいなら無口な奴だと思われておいた方が楽だ。こんな言い訳を思いついてしまったので、どんどん殻にこもってしまった結果、会社ではほとんど話さない人間になってしまった

自慢のコミュ力は何処へやら。
「日本語だったらコミュ力あるんやで…」という苦い思いをチキンソテーと一緒に、オフィスのキッチンで独り静かに飲み込んだ。半泣きで。

ほんとは同僚たちのこと知りたいし、仲良くなりたいんだけど。
隣で盛り上がってる彼らに混じってジョークの1つや2つ言いたいんだけど。
言葉が不自由すぎて、人と関わること自体が正直めんどくさい。

仕事を始めたら自慢のコミュ力がどんどん無くなってしまった。

突然だけど、イタリア人の恋人、エマノエル(以下、エル)はオタクである。
私には3つ年上のお兄ちゃんがいるが、彼もまた、オタクである。

そんな2人が初めて秋葉原で出会い、ラーメン屋のカウンターでラーメンをすすった日の話。

エルの来日が決まった時、
「海外旅行行ったらイタリア人の彼氏ができた。今後結婚すると思う。日本来るから紹介させて」と、お兄ちゃんに報告すると
「そうか。アニメ好きだったら秋葉原とかどう?案内できるよ」と提案してくれた。

初顔合わせは秋葉原に決まった。

お兄ちゃんの家から秋葉原まで電車で1時間はかかる。
しかもお兄ちゃんはかなり人見知りで、英語は私よりもだいぶ話せない。要するに全く話せない。
さぞストレスフルだっただろうけど、エルが買いたいものや好きなゲームを聞いて事前にお店をリサーチしてくれていた。

当日、ヨドバシカメラで待ち合わせして中1英語で簡単な挨拶を済ませてからは、私が最弱通訳として間を取り持った。
幸い2人ともオタクなのでアニメや漫画やゲーム名はわかる。単語だけだが、時折2人だけで会話もしていた。私はホッとした。

お目当のゲームやアニメのグッズを買い込んだ後、ゲームセンターに向かった。
エルがオンラインでやっていた好きな対戦ゲーム(鉄拳みたいなやつ)を事前に聞いていたお兄ちゃんが、ここなら実機でできるよ!と教えてくれたのだ。

喜ぶエル。
200円を入れて、いざ勝負。
真剣そのものだ。ギラギラ太陽が目に宿っている。あなたそんな鋭い眼差しできたんや。

圧倒的だった。
圧倒的な負けだった。
私はこのゲームを全く知らないが、知らない私でもわかるくらいボッコボコ。

私は思った。だってここは秋葉原だもの。
日本中から猛者達が集まるこのゲームセンターで、オンラインゲームを嗜んだ程度では勝てるわけないのだ。ナメるなよ、日本のオタクを。

ボッコボコにされているエルの後ろで、大きな体のお兄ちゃんが財布の中を探していた。
「きっとこのゲーム終わったらもう一回やりたいと思うんよね。オレ小銭ないから崩してくるわ」

こーゆー人なのだ。お兄ちゃんは。

彼はのっそのっそとジュースを買いに行った。
その背中を見て、なんだか私は嬉しかった。

ジュースを買って帰ったお兄ちゃんの「1000円を崩したから小銭たくさんできたよ!」の思いをよそに、エルは意気消沈。
もうゲームは大丈夫らしい。「ダイジョウブ、ダイジョウブ…」と今にも泣くんちゃう?ってくらいの小声で呟いた。

それから、またいくつかアニメ系のショップを回り、最後にラーメン屋に行った。
お兄ちゃんが、きっとここのラーメンなら外国人のエルも食べやすいと思う、と選んでくれたお店だ。


小さい店内のカウンターで、三人並んで豚骨ラーメンをすすった。
わ、美味しい。
エルも美味しそうに食べている。

食べ終わり、そろそろ出ようかとなった頃。
お兄ちゃんがエルを見ながらゆっくりと言った。

「今日は会えてよかった。英語がうまく話せなくてごめんね。次会うまでにもう少し話せるようになっておくね。君の好きなゲームもやってみるから対戦しよう。今日はありがとう」


と。
日本語で。

「いや、わかるかい!」と思わずつっこんでしまったが、エルは「ハイ!」とうなづいた。

エルは雰囲気に合わせて言った訳じゃなく、本当にわかっていたのだ。


お兄ちゃんがエルと会えて喜んでること、本当に仲良くなりたいと思っていること、そしてお兄ちゃんの人柄を。


海外の会社で一人静かにランチ終えた時に、ふとこの日の出来事を思い出した。

人となりは伝わるのだ。
英語が話せなくたって、ジョークの1つや2つが言えなくなって、相手をどう思っているか、私がどういう人間なのかは伝わるのだ。
次は彼らに話しかけてみよう。コミ力に頼らなくたって、コミュニケーションは出来るもん。



ちなみに、あれから日本で何軒もラーメン屋に行ったが、今でもエルは「お兄ちゃんくんラーメン is No. 1」と言う。

うん、ほんと美味しかったよね。また食べに行こう、3人で。

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