断食ダイエットしたら、親を泣かせてしまった②

思い出ぼろぼろ

前回までの話

89.9キロもあった私。まずは筋肉よりも精神を鍛えるため、お寺の断食道場に参加。
修行を共にするのは「人生を幸せに…系セミナー」の講師とその生徒さん達。
いろんな事に心の距離を取りながらいよいよ修行開始!
(前回までの詳しい話はこちら

4:45〜  回峰行(かいほうぎょう)

和尚の 前のめりさに、
ピラミッドの目の前はそこそこ大きい街が広がってるらしいで、と知った時と同じくらいの残念さを感じながら、修行の準備が始まった。

真冬の山。
凍えるくらい寒い中、ジャージの上から白装束を纏い、菅笠をかぶり、
熊よけの鈴がついた杖を手に、準備万端!

↓インナーはジャージ、靴は長靴だけどこんな感じ

おぉ!っぽい!!

自然と言葉尻も穏やかになり、話し方がはんなりする。
はんなりは関係ないけど、丁寧な気持ちからか、安田美沙子も焦るくらいはんなりしてまう。


いざ出発どすえ。

と思ったら、和尚は御見送り。
というのも和尚は足が悪いそうで。

代わりに私たちを先導してくれるのは、このお寺で何年も修行しているスネさん。


スネさんは60代で初めて修行を体験。
心が洗われていく感覚に魅了され、
以来ここで自身も修行しながら体験者にお寺での生活や、掃除、修行の細かい方法について教えてくれるいわば教育係。

(ちなみに、スネさんとは、私だけが心の中で読んでいたあだ名。その理由は後ほど説明する。)

そして和尚の他にもう一人、お寺に残る人がいた。

セミナー団体の中の一人、ヒデちゃんだ。
ヒデちゃんは私の次に若くて30代前半。
20代の時に脳梗塞で倒れ半身不随になり、歩行には専用の松葉杖が必要なのだ。


2人は車で山頂の寺院へ向かうらしい。


――
夜明け前。
まだ暗い山道を照らすライトを手に、凛とした空気の中、始まった。


いよいよ、回峰行だ。

回峰行だ、ゆーてますけど。
なにするん?回峰行。

そんなみなさんのために説明しよう。

回峰行とは…
● 雨の日も風の日もひたすら歩き続けるという荒行で、平安時代から伝わる「千日回峰行」が有名。
● 1000日間歩き続け、一旦始めると途中でやめることは許されず、その時は自ら死を選ばなければならないめちゃくちゃ過酷な修行。
●吉野山でこれを達成できたのは1300年間の間に、なんと2人だけ。
●達成した人は大阿闍梨(おおあじゃり)という称号になる。

ちなみに…
1999年に大阿闍梨になった塩沼さん(当時なんと31歳!)はクレイジージャーニーなんかにも出演されてて、とても面白い、かつ勉強になるのでよかったら検索してみてください。
(塩沼さんHP

で、だよ。

そんなもんを89キロの私ができるわけないやんか。
覚悟なんてカケラも持ち合わせてないんだから。


まぁ案ずることなかれ。
このお寺での回峰行は、山頂にある寺院に向かって山道を2時間歩き続けるだけ。

まぁお手軽!
大阿闍梨のえげつない荒行の後に見ると、もはやただのハイキング!山ガール!


とね、思ったでしょう。

ちゃうねん。

めっちゃしんどいねん。

標高800m、3キロの山道。
これをほぼ小走りで登るねん。

――
山道のスタート地点に向かう。

私はセミナーの皆さんとは馴染めてなかったので、スネさんと談笑しながら歩く。
その間、およそ2分。



もうしんどい。

ぶっちゃけ、すでに息が上がっている。
まだ山道も始まってない、コンクリートの道路を早歩きしただけやのに…。

89キロの身体ってこんな重かったのか。


スタート地点に着くと、思っていたよりも急な傾斜が続いていた。
開始早々、どんどんセミナーご一行に追い抜かれていく私。

先頭でスタートしたのに5分後には最後尾だった。

それにしても早い…。

斜面が急なので、一気に登ったほうが楽らしくほぼ小走り状態。

スネさんはスタスタと山道を駆けていく。

え、ハンター試験?




どんどん置いていかれる。

朝日が昇る前の薄暗い山道、白装束を来たみんなの姿は、もう見えない。

真っ暗な道を自分の呼吸音だけが響く。


フシューって。

フシュー、フシューって。


息ができない。
喉をギュって握られてるみたいや。

歩けど歩けど、景色がちっとも移ろわない。
私は進んでないのだ。


フシューフシューって。ゆーてるだけ。

もうね、まさしく、ニコル。

藤田じゃない方のニコルね。
ハンター試験で最初に脱落者した方のニコル。

え?冨樫、私をデッサンしたの?ってくらい、マジでニコル。

そりぁ89.9キロだしなぁ。

階段なんてもう何ヶ月も登ってないもんなぁ。
1メーターでもタクシー乗っちゃってたもんなぁ。

日々の生活を呪っても時すでに遅し。


もう息ができなくて、立ち止まってみたけど、
進まないことには終われないわけ。

鉛のように重い足を一歩一歩、ゆっくりを前に出す。

私は変わりたいんや…!


――
何分かかったんやろか。

少し先に、みんなが私を待っているのが見えた。

待ってるのが見えても、少しも急ぐことができない。
過呼吸かってくらい息を荒げながら、やっとみんなに合流した。


恥ずかしさと、情けなさと、申し訳なさと。

私が追いついた時、みんなはスネさんと談笑していた。

そして、誰一人として私に声をかけてこなかった。


そこからは比較的穏やかな道が続いた。

――
回峰行が始まって2時間半。
(通常は2時間くらいだけど私が激烈に遅かったので時間がかかった)

やっと山頂の寺院についた。
和尚とヒデちゃんは車で先回りしていたようだ。


しんどい修行は終了―!


と、思ったのに、
違う種類のしんどさが待っていた。

今から、叫ばんといけんらしい。

順番に一人づつ、
大きな鐘をつき、
目の前に広がる広大な山脈に向かって
叫ばんといけんらしい。



南無大師遍照金剛」って。


思ったよね。
なんて読むんーって。
紙に書かれたお経渡されたけど、なんて読むんーって。

まぁ必死よ、読めないからセリフが頭に入ってけえへんもん。

しれーっと後方に並び、並んでいる間になんて叫ぶのか耳コピ。

空前絶後じゃない?お経の耳コピ。


なるほど、
「なむだいしへんじょうこんごう」と読むらしい。

心の中で復唱しながら、ついに私の番!!!
鐘を大きく鳴らして…叫ぶわよ!!!!

「なむだいしへんじょうこんごうー」

ビックリした。





ぜんっぜん、声でえへん。

だって…
叫ぶなんて、中学生の体育祭ぶりだし
腹から声出したことないから、どうしたらいいのかよくわからんし。
さっき山道で喉ギューされてたし。
最初の音高く出しすぎて浜崎あゆみの「アリーナー!!!」みたいな声になってもうたし。


真剣に叫ぶってめっちゃむずい。


恥ずかしさで顔が真っ赤になる私の後ろから、
和尚が「まだ小さい。もっとぉ!」と喝を入れられる。

和尚のもっとぉ!の方が10倍大きい。



なむだいしへんじょうこんごうー!

まだ。もっとぉ!

なむだいしへんじょうこんごうー!!!

もっとぉ!!!

なむだいしーへんじょう、こん、ごうー!!!

…よし。




全然良くなさそうな「よし」、いただきました。

なにわともあれやっと終わった。
山登りも叫ぶのも、どっちもめっちゃしんどいやん…。
これを毎朝するのか…。

――
叫んだ後は、崖の上でゆっくり瞑想をして、下山スタート。

登りに比べたらかなり楽だった。

その道すがら、私はセミナー講師・ケンさんと話した。

幸せに生きる系セミナー…。


最初は構えていたけど、
ケンさんの持つ穏やかな雰囲気と、回峰行を終えた開放感で
オープンマインドになった私は、気づけば悩みを打ち明けていた。


ケンさんはすごかった。

「ヒンドゥー教えでは、そんな時△△△って考えるんだけど、
最近、ドイツの大学で実験が行われて、◯◯◯◯って結果が出たんだって。
だからもしかしたらユキ子さんの悩みは◼️◼️◼️って考え方ができるかもしれないね。」


今まで思いもしなかった視点だった。
それでいて、
知識をひけらかすわけでもないし。
押し付けるわけでもない。

とにかく博識で穏やか。


いろんな引き出しから知識や教えを出してきては、私の悩みに合わせて調合して…

悩みの処方箋を出してくれてるかのよう。
そんなん、もう釜爺やん。千と千尋神隠の釜爺ですやんか。

釜爺の調合した薬湯でざぶーんと、心が洗われた気がした。

そもそも、セミナー御一行は気持ちの良い人達だった。


行きしなの登山中もそうだ。


1人顔真っ赤にして、肩で息をしながら、かなり遅れて合流した私へ彼らが声をかけてこなかった事に、どれだけ救われたことか。

「大丈夫?」とか「頑張ったね」とか言われてたら、
惨めな気持ちに押しつぶされてただろう。

ケンさんたちは、私のそんな気持ちをわかった上で、あえて声をかけてこなかったのだ。

あの時、なんて優しい人たちなんやろ、と思ったけど、
ケンさんとの会話で抱いていた警戒心が一気に吹き飛んだ。


聞くと、ケンさんの人生は災難が重なり波乱万丈だったそうな。

その中で、たくさんの指針になるような言葉に救われてきたらしく、それをメモ代わりに発信していたら読者が増え、本を出版。
そしてセミナーを開催するようになったらしい。


確かに、ケンさんとの会話の中には「人生を幸せに生きるためのヒント」がたくさんあった。

失礼な決めつけをしていたな、と反省しながらお寺に戻った。

まだ修行は始まったばかりだ。



次回、「和尚とケンさん、直接対決」をお送りします。

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